ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

明けない夜

ちょっとご無沙汰してしまいました。原稿の締め切りやら、ちょっとした体調不良なども手伝って、更新する余裕がありませんでした。皆さん、お元気でしたか?


さて、ちょっとした「体調不良」について驚愕の事実を発表しておきます。驚愕の事実だなんて「そんなに話を盛っちゃっていいの?」と思われるかもしれませんが、大丈夫です。ご安心ください。


実は、ある朝、目が覚めると、猛烈に喉が痛くて、その晩から発熱しました。風邪かなぁと訝りながらも、なぜ喉が痛くなったのか、判然としませんでした。


理由はこれでした。


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 在中国日本国大使館からのお知らせ


北京市等の大気汚染について

平成25年1月14日
在中国日本国大使館


中国各地で深刻な大気汚染が発生しています。特に、北京の汚染がトップクラスである旨発表されております。


 週末(1月12日、13日)の北京では、一部観測ステーションで、PM2.5の観測値が史上初の900μg/m3に達しました。(環境基準値の12倍、WHO指針値の36倍に相当します。)


※「霧」と「スモッグ」:冬季は、暖房用の石炭焼却に伴う排ガスが増加する上、空気が滞留し「霧」が発生する気象条件が生じやすいため、大気汚染の「スモッグ」も滞留しやすくなります。


1 現在問題になっている「PM2.5」は、直径が人の髪の毛の約40分の1という微粒子で、肺の奥、さらには血管まで侵入し、ぜんそく・気管支炎、肺がんや心臓疾患などを発症・悪化させ、死亡リスクも増加させるといわれています。

 →高齢者や子供、肺・心臓に疾患のある方は、大気汚染に対してより高いリスクを有するため、特に注意が必要。(北京大学の昨年の研究では北京、上海、広州、西安PM2.5を原因として年間8千人が死亡、世界銀行環境保護部の2007年の研究では中国全土でPM10を中心とする大気汚染により年間35〜40万人が死亡と推計)

2 気象台の発表によれば、現在の気象条件は16日(水)頃まで持続するとされており、引き続き注意が必要です。

3 自分や家族の健康を守るための対策としては、以下のような対応が考えられます。

 ●不要不急の外出を避ける(PM2.5には安全とされる閾値がないとされているため、可能な限り汚染への暴露を減らすことが重要)

 ●外出する場合は、マスクを着用する(「N95」という規格を満たしたマスクは、PM2.5を95%以上遮断します。ネット上で「口罩N95」で検索できます。)とともに、帰宅時はうがいを励行する。

 ●屋内(特に寝室など、長時間過ごす部屋。屋内の汚染レベルは屋外の約半分に達することもあります。)には、空気清浄機を設置する。



<参考>
○当館での情報提供(北京の大気汚染の概況、粒子状物質(PM10、PM2.5)の健康影響、一般的な対応策)
http://www.cn.emb-japan.go.jp/consular_j/joho120217_j.htm

○最新の大気汚染データ(米国大使館の観測データを日本語により情報提供)
http://www.lantiantian.com/index.php/ja/home

 指数100が環境基準に該当しますので、外出の可否、外出時のマスク着用や空気清浄機利用の目安となります。

 北京日本人学校では、指数が200を超えると屋外での活動を1時間以内とし、300を超えると屋外での活動を中止しています。



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 http://www.cn.emb-japan.go.jp/aboutus_j.htm
【在中国日本国大使館】

なーるほど。我が家は築3年の高層マンションですが、窓を閉めておいても、あっという間に埃が積もるような部屋なのです。だから、夜寝ている間にも、この大気汚染物質が、私の鼻から喉を侵し、お熱出ちゃったわけなのです。タバコのお嫌いな方ならお分かりになると思いますが、狭い個室の焼肉屋で宴会をし、参加者が全員喫煙者だった。そればかりか二次会のカラオケで一人10曲ずつ歌い上げてしまい、挙句、目覚めたら自宅のトイレで寝てた。…というような感じ。壮絶かつ凄惨な状況をご理解いただけたでしょうか。


さて、冗談はほどほどにしておいて、今、中国がどういう状態になっているのかということをお話ししておこうと思います。引用したメールは北京の情報を伝えていますが、実際はかなり広範囲に汚染が広がっています。理由はメールにあった通り。この時期特有の「暖房公害」です。中国の北のエリアは、日本の東北地方から北海道くらいの緯度に位置します。最北にあたるハルピンは稚内とほぼ同じ北緯(だいたい45°北)。ですから、北方生活者にとって「冬の暖房」は必要不可欠なものです。


中国北方で使用されている暖房設備は、「暖気」と呼ばれる温水暖房です。市政府が管理し、住まいの平米数に応じて一冬当たりの料金が設定されています。毎年11月15日から翌年の3月15日まで、市が管理する各温水供給施設から、60℃〜80℃程度のお湯が各家庭に供給されています。最近では、各マンション単位で管理運営を行っているところも増えてきており、寒ければ11月の第一週から供給を開始したり、ちょっとでも寒いと「温度設定が低すぎる。共益費を返せ!」と怒鳴り込んだりされますから、先手を打って温度を上げたりしているようです。豊かになれる者から先に豊かになりなさい、という教えどおり、中国人民の生活格差はどんどん広がっているわけなのですが、人の欲望とは恐ろしいもので、豊かになった人々は、以前は我慢できていた寒さでも、耐えられないと感じるようになるのですね。


さて、ここまでの話だけですと、なんだか快適で良さそうな暮らしだな、と思われるかもしれませんが、真の快適性とは一体何なのかを問うてくれたのが、今回の喉の痛みと発熱でした。


北欧諸国でも温水暖房を採用しているようですが、そのシステムに大きな差があります。例えばアイスランドでは、地熱発電で使われたお湯(すなわち温泉)を利用し、各家庭の暖房用として供給しているそうです。お風呂も温泉の湯ですし、除雪にも利用していたりして、非常にすばらしい資源の循環を実現しています。ところが、中国の場合は、温水暖房用として供給されるお湯は、ほぼ石炭(練炭)で沸かしています。町のあちこちにある煙突から白い煙が立ち昇ると、石炭を燃やす匂いが中国北方の町を包み込んで、これはこれで風情があってヨロシイのですが、それはあくまで、ひと昔前の価値観。地球温暖化問題に直面している中で、「あの巨大な中国が石炭暖房? 恐ろしいなぁ」というのが世界の率直なご意見でしょう。


今回のスモッグ問題に、意外と日本がツッコミを入れて来なかったのは、おそらく第一番目の要因として、原発の問題を抱えているせいだと思います。原発を止め点検し、建設中だった原子力発電所の計画を中断したりするところまでは良かったのですが、その代替エネルギーを確保し切れておらず、石油やガス、石炭などを燃やす火力発電に頼らざるを得ないという、「日本らしからぬ失態」を演じているからです。そして、二番目の要因として、日本の製造メーカーが中国に生産拠点を持ち、サプライチェーンを広げているためでしょう。日本国内の工場は、環境規制の基準に則って、地球環境問題の解決に向けて、全世界をリードできる立ち位置にいますが、海外拠点の場合は現地の基準に従う例が多いのです。そうでなければ、わざわざ海外に工場を作るなんて面倒なことはしませんし、まして中国の場合は、以前のように「安い人件費、安い材料」という魅力が薄れているため、現地日系工場も日本ほど環境問題に気を遣わないというのが実態です。ですから、中国の公害問題に物申してしまうと、薮蛇となる可能性があるわけです。


ちょっと長くなりましたが、まだ続けます。


今回、私のところに届いたメールは「在中国日本大使館」が送信しているものですが、この情報ソースそのものは、中国当局の公式発表です。「中国にしては珍しいな」などと思ってはいけません。こういうことも外交戦略の布石として利用するのが中国です。内外に中国の実情を伝えながら、イメージアップを図り、あわよくば「もっと援助してね」というのが狙いなのは火を見るより明らかです。そして、まもなく迎える新年の爆竹・花火合戦は「ほどほどにね」と暗に国民に伝えておくという小賢しさ。「いやあ、言ったんだけどね。言うこと聞かなくて」と国民に責任転嫁しているように思えてなりません。


中国の明けない夜明けはまだまだ続きます。日本も待っているばかりでは、暗闇は抜け出せませんよね。日本人の矜持を見せつけてやろうじゃありませんか。