ひだまりの居場所

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知識を活用する力

<中国>「世界末日」信じるメンバー57人拘束
毎日新聞 12月15日(土)22時32分配信

 【北京・工藤哲】香港の人権団体「中国人権民主化運動情報センター」は15日、中国陝西省福建省四川省湖北省重慶市で「人類が滅亡する」などといった「世界末日」の存在を信じる集団が存在し、今月8〜13日に各地でメンバー57人を中国当局が拘束したと伝えた。センターによると、この集団は中国当局が警戒を強めてきた宗教団体には属さず、口頭で親類らに「世界末日」を信じるよう伝えていたという。

 これに関連し、陝西省の主要紙「華商報」は14日、「全能神」と呼ばれる団体が「世界末日」を訴え、教えを信じるものは平安を保てるなどと宣伝していると伝えた。団体はキリスト教系とみられ、「東方閃電」などとも名乗っているという。

12月21日の冬至に起こるとされるアセンション。映画『2012』でも話題になりましたから、ご存知の方も多いでしょう。日本ではどのくらい話題になったのか私はよく分からないのですが、中国では結構この映画に影響を受け、来週やってくるアセンションを境に、何かが起こるとひそかに思っている人がそこそこいるようです。もちろん今、中国は急成長時代の中にあって、急成長による綻びが問題になってきているという社会不安が後押ししていることは言うまでもありません。


アセンションにはおそらくいろいろな意味があって、中国人が騒いでいる「人類滅亡」がアセンションそのものを意味するわけではないですよね。私はむしろ、地球そのものが次のステージに向かう分岐点であると受け止めていて、これまでの価値観や常識がアセンションから徐々に新しい価値観や常識に変わっていくものだと考えています。もちろんこれとて、正解ではないのですが、どうも中国人は、こういう「自分の考え」を持つことが苦手なようです。


普段、まったく「危機管理」ということに無頓着で、一般庶民が死と隣り合わせにあっても、少しも対策を立てようとしませんし、まあ、こういっては何ですが、一人二人死んでも、あまり痛くもかゆくも無い。人が何かの犠牲になって死んでも、それに対して声を大にして対策を求める人たちは、その遺族や亡くなった人と利害関係のあった人ばかりです。


今回の報道は、ごく一部の狂信的な活動家によるもので、こういった事態が中国全土に蔓延しているわけではありませんが、世情の一側面を表した事件であるように思います。中国には、「党」を超える絶対的な存在というものはことごとく排除されていきますから、人民を苦しめるのも幸せに導くのも、すべて党にゆだねられています。それに対して反発心を持っていても、党の存在があまりに巨大で、戦う武器を持ち合わせぬ人民は、反発心を内に秘めたまま、不安と戦う毎日なのです。


それが、「神」「仏」「思想のリーダー」といった、党を恐れぬ巨大な存在に出会ったとき、崇拝を向ける先が突如として入れ替わります。「やっぱり間違っていたんだ。こっちが正しいんだ」と思い込んでしまうのです。古代から、中国の神は皇帝でした。皇帝は高いところから人民を見下ろし、人民は低いところでこうべを垂れかしずくのが当たり前の国家でした。しかし、信仰を持つ国では、一国の領主は国民に背を向け…つまり国民の先頭にあって、神のおられる方向を向き、皆と共にこうべを垂れ、あるいは天を仰ぎ見るという位置関係を持っています。


皇帝不在の現在の中国では、党がその役割を演じているわけですが、内部は利権で乱れ腐りきっていることを知っているので、かしずくことはあっても、あくまで「利益」目当てのかしずきです。そんな中に登場したアセンションは、仲間を増やし、党を目覚めさせるために発足した狂信的な信仰の一つであるように思われます。表立って行動すると、たちまちお縄ですから、かなり水面下で動いていたのが、アセンションの直前になり、表面化してしまったのでしょう。


知識は人生を助ける、という言葉を信じ、エリート大学に入るため、勉強以外のことを一切してこなかった中国の若者たちは、ただ頭でっかちで、せっかく得た知識を活用するという社会経験を全く通過していません。知識だけで動こうとすれば、当然ほころびが生まれます。日本の若者と決定的に違うのはその点です。自分が何をすべきなのかも分からず、社会に出て、一人前の仕事をしようとしてしまうので、事業は空洞化し次々に破綻しています。自分はどう生きればいいのか、何のために生きているのか、という疑問にさえ封印し、ただただ強いものに巻かれるようにこの貴重な変革期をやり過ごそうとしているのです。非常に消極的で、見ていてもどかしくなります。


今回、当局に拘束された57人は、そういう意味では、本当に勇気ある行動ができた人たちだと私は個人的に思います。もちろん何らかの金が動いていた可能性も決して否定できませんが、何か一つのことに共感した民衆が、草の根の市民運動から国を動かせるようになる日を、私は心待ちにしているのです。拘束されたことは報道し、大衆への戒めとする、党独特のやり口を、そろそろ人民は許さなくなってくるでしょう。労働者よ、ぜひ立ち上がってください。自分が信じるものを見失わないでください。