ひだまりの居場所

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万里の長城における遭難死亡事故

万里の長城遭難>ツアー会社、謝罪繰り返す
毎日新聞 11月5日(月)11時43分配信

 中国河北省の「万里の長城」付近で起きた日本人ツアー客4人が遭難した事故。現場は観光客が立ち入るような場所ではなく、当時は大雪にも見舞われていたという。企画した旅行会社は3年前に北海道で8人が死亡した山岳ツアーを主催しており、同社幹部は「申し訳ない」と繰り返した。


 ツアーを企画した「アミューズトラベル」は5日午前、東京都千代田区の本社で板垣純一総務部課長(38)が報道陣を前に「お亡くなりになられた方々、ご遺族にはたいへん深く、申し訳なく思っています。おわび申し上げます」と謝罪。同日朝、情報収集などのため、社長らが飛行機で現地に向かったという。

 同社によると、遭難した4人が参加していたのは「世界遺産 万里の長城 グレートウォール・100キロトレッキング」という10月28日〜11月5日(8泊9日)のツアー。民宿に泊まりながら、添乗員らが付き添い、7日間で100キロ余を歩く計画だったという。今回が初開催だった。

 アミューズトラベルは09年7月、北海道・大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で8人が死亡した登山ツアーを企画。登山客15人とガイド3人が遭難し、50〜60代の客7人とガイド1人が低体温症で死亡する夏山史上最悪の惨事となった。北海道警は暴風雨の中で計画を強行したガイドの判断や同社の危機管理に問題があったとみて、業務上過失致死傷容疑で捜査している。

 日本山岳ガイド協会の事故調査委員会が10年2月にまとめた報告書は「一義的にはリーダー(死亡)をはじめとしたガイドの判断ミスによる気象遭難」とした。一方、アミューズ社について「会社の急成長に比べ、社内やガイドの危機管理体制が追いついていない。登山を単なる旅行商品の付加価値として位置づけているのでは」などと指摘していた。【福島祥、伊藤直孝】


久しぶりのアップですが、また心の傷むお話です。実は、私、この11月4日(日)に、北京市郊外の未修復長城への日帰りツアーに申し込んでいました。ところが、2日(金)の夜になって、幹事から連絡があり、「北京郊外の山間部は大雪とのことですので、中止します」と言われました。「寒いしね。嫌でしょ?そんなときにわざわざ長城に登るのも」と彼女は言っていましたが、「いや、危ないから(笑)」と私も軽い口調で中止に賛成しました。


実は、万里の長城には、もう数え切れないほど訪れています。北京周辺の長城だけでなく、6000キロ続いていると言われる長城の、未修復カ所を何ヶ所か登っていて、いずれも好天に恵まれた良いツアーでした。確かに、山の奥深くの長城へ行くと、足元が瓦礫だったり、山肌が崩れていたりして、かなり危険な場所もあります。でも、天候が良ければ、自然の美しい景色の中に、古い長城の狼煙台が遥かかなたに転々と続き、いわば絶景とも呼べるようなロケーションを拝めるのです。ハードな登山とは違って、気軽に出かけられるハイキングといった気分で、通常、軽装で出かけていきます。


ですから、私も、今回のツアーの中止の連絡を受けたとき、「雪で滑って転倒したら、危ないよなぁ」くらいにしか考えていませんでした。だから、「いや、危ないから(笑)」と彼女に言ったのです。


それがまさか、こんな惨事が起きるほどの雪と強風だったとは。


詳しい調査はまだ行われていないようですし、今後もどこまで正確な検証が行われるかわかりませんが、一つ確かなことがあります。日本のツアー会社のアミューズトラベルのずさんな管理体制を指摘する声が非常に大きいですが、現地の旅行社にも大いに問題があったでしょう。現に、私たちのツアーも、中止を決定したのは、私たち発起人である日本人の客側からでした。中国の旅行社はキャンセルの連絡を受けて、「なぜ行かないんですか?大丈夫ですよ。何も問題ないでしょう」と決行をすすめてきました。冬になれば雪が降るのは当たり前。雪ぐらいで旅を中止するなんて、なんと意気地のない寒がりな客なんだ、と言わんばかりの対応でした。


ところが、実際にあの日、人の命が奪われるほどの遭難が報道され、私たちが依頼した旅行会社の社長さんから、「驚きました。皆さんの判断は賢明でした。感謝します」と連絡がありました。


日本から中国にいらっしゃる方々に、ここで改めてご注意を申し上げたいと思います。上から目線で恐縮ですが、中国生活者として、どうしても伝えておくべきだと思ったんです。


中国は観光大国のような顔をしていますが、観光資源が豊富なだけで、観光に伴う危機管理は全くできていません。まして登山などが組み込まれているツアーは、全く危険と隣り合わせであることを今一度肝に銘じてください。


私はかつて、新疆ウイグル自治区カシュガルからパキスタンにまたがるカラコルム山脈を貫く「カラコルム・ハイウェイ」をバスで移動したことがありました。パキスタン側に行くと、相当な悪路で、世界一危険なバスルートと呼ばれていることから、安全策をとって、中国側のカラクリ湖(標高4000mほど)まで行き、引き返すというコースプランを立てました。中国側のカラコルムハイウェイはかなり整備が進んでいて、路面もアスファルトだという話だったのですが、実際に行ってみると、想像をはるかに超えた悪路でした。今にも落ちてきそうな巨大な岩石が頭上にいくつも連なり、道の反対側は断崖絶壁。ガードレールさえない道路です。途中、二度の渋滞に遭いました。一度目は落石撤去作業による通行止め。二度目は大型トレーラーによる死亡事故処理のためでした。毎日、こんな感じなのだとガイドさんが言っていました。つまり、落石に当たって命を落とすかどうかはあくまで「運」。現に、路肩には、落石でぺちゃんこにプレスされてしまった事故車が、あちこちに生々しく放置されているのです。


いつかは、カラコルム・ハイウェイからK2を眺めてみたい、なんてノンキな夢を持っていましたが、私ごときの覚悟のゆるい人間が軽はずみに行くべき場所じゃないな、と思いました。


でも、日本人は、そんなところにも果敢に挑戦し、毎年何人もの観光客がこのハイウェイを訪れ、渋滞にはまり、「運よく」帰国できているというのが、現状です。こんなコースが、「中国シルクロードの旅・デラックス8日間」なんてタイトルで旅行会社の店頭のチラシを賑わし、50代、60代の元気なおじちゃんおばちゃんが、即申し込めるわけですから、知らぬが仏です。「中国のホテルは風呂場の排水が悪い!」などと旅行会社にクレームをつけたりしている場合ではありません。一度は行ってみなければ死ぬに死ねない、というくらいの心意気の方だけにおすすめできるようなルートです。


冒険旅行と健康維持目的の旅行は、全く別物です。みなさん、どうぞご注意ください。私ももう無茶はやめます。