ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

写真を撮る

日本人はなぜかカメラを向けられると、Vサイン(ピース)をする人が多いですよね。若い世代の人たちはもっと違うポーズをとったりするのかもしれませんが…。


これって、外国人から見ると、とても不思議なことのようですね。また、国によっては、良くない意味に受け取られる場合もあるとのことだから、それを知って以来、私はあんまりうかつにVサインをしなくなりました。


さて、中国の人たちですが、この10年ほどで急激に経済発展したという背景があるので、なにかこれといって決まったポーズは定着していないようですが、何せ「自分大好き!」という民族なので、写真に写ることが基本的にだーいすきです。


観光地などに行っても、スター気分でポーズをとり、すっかり自己陶酔している人たちが大勢います。私はそのポーズに、どうしても違和感がぬぐえません。波止場で石原裕次郎が…みたいなポーズと言えば、分かり易いでしょうか? あるいは、高度経済成長期に新婚旅行した若かりし頃のお母さんの、無理無理なポーズ? 要するに、ちょっと古い感じがするのです。


考えてみれば、この国の人たちの美の価値基準は、京劇をはじめとする民族歌舞や武術の型にあるわけで、そういうものって、突然の経済成長で劇的な変化をするわけではありませんから、カメラを向けられると咄嗟に古いポーズをとっちゃうわけですね。その辺は、いまだにVサインしちゃう日本人と同じとも言えます。


私は仕事柄、プロのモデルさんやカメラマンさんといっしょに仕事をすることがあるのですが、プロでもやはり世界に通用するような一流の方と、そうでない方とで、ポーズのとり方(カメラマンさんの場合はポーズのとらせ方)に大きな違いがあります。これはヘアメイクさんにも言えることで、どうも目尻をつり上げ気味に描くメイクさんが多く、それはやはり京劇スターの影響なのだと思います。


モデルさんは、最近、クールビューティーが流行のようで、あまり笑いたがりません。ちょっと怖いような写真がおしゃれなのです。しかし、こちらはそういう写真を求めているわけではないので、「もっと自然に! やわらかい女性らしい雰囲気で!」と注文をつけると、とたんに京劇になってしまうモデルさんが数多くいます。


京劇の女優さんのシナの作り方というのは、歌舞伎の女形と同じで、もともとは男性が女性を演じていたものですから、かなり強烈です。ただでさえ色っぽい女性のモデルさんが、京劇風のシナを作ると、はっきり申し上げて「気持ち悪い」の一言につきます。あんな風に迫られたら、どんな美人であっても、男性は及び腰になるでしょう。


カメラマンさんも、京劇感覚の抜けない人が結構多いので、こちらの意図が分かってもらえず、撮影にエラク苦労することがあります。以前、そういうカメラマンさんといっしょにお仕事をして、普通なら1時間足らずで終わる撮影が、2時間半もかかってしまったことがありました。カメラマンさんのモデルへの指示がことごとく気に入らず、私を含め複数の日本人が、外野から「そーじゃない!」「その角度で肩を入れないの!」「そんな小首をかしげたポーズいらない!」などとヤンヤと突っ込みを入れっぱなし。カメラマンさんもぐったりしてしまって、「なんだかうまく撮れなかった…」と、がっくり肩を落としての撤収となりました。


ところが、実際にパソコンで自分の撮った写真を見て、カメラマンさん自身がびっくり。「これ、ホントに俺が撮ったのか?!」と思わず言ったほど、現代感覚豊かな写真が撮れていたのです。そのカメラマンさんは、それ以来、日本の雑誌をしこたま集めてきて、ものすごく研究をし、今や私達のお抱えカメラマンとなりました。カメラマン仲間から、「日本人のモデル使っているのか?」とよく聞かれるのだとか。「いや、日本人なんか一度も撮ったことないよ」というと、みんなスゴイと言って賞賛してくれるのだと、とても喜んでいました。


この話題、もっともっと書きたいことがあるので、また改めて続きを書こうと思います。ぜひまた読んでくださいね。