ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

忘れ物、落し物、盗難品

忘れ物、落し物、盗難品。これらは中国では二度と帰ってこないものと考えていいでしょう。いかなる忘れ物であろうと、落し物であろうと、二度と自分の元には戻らないのです。盗難品については、一部戻る場合があります。例えば、財布をすられた場合、財布の中の現金は戻らないけれど、カード類は比較的戻ってきます。まあ、これは日本と同じかもしれません。


さて、いかなる物であろうと、と書きましたが、本当にいかなるものであろうとも…です。日本に留学した学生が日本滞在中のこんな話を聞かせてくれました。


冬のある日、アパートからだいぶ離れたところにある郵便局に小包を出しにいきました。その時、マフラーをうっかりカウンターに置き忘れてしまいました。バスを乗りつがなければ行けない郵便局だったので、マフラーのことは諦めていたのですが、半年ほど経ったある日、たまたまこの郵便局の近くを通りかかったので、「ひょっとしたら…」と思い、局員に尋ねてみたのです。そしたら、僕のマフラーがきれいなジッパー付きポリ袋に保存されて郵便局の奥の棚から出てきました。置き忘れた日にちと時間がシールに書いてあって、ポリ袋に貼ってありました。古い安物のマフラーだった上、半年も放置してあったのに、ちゃんと保存してくれてあって、「日本って、すごい国だ!」と感動しました。取っておいてくれたこと自体にも感激しましたが、こんなに丁寧に保存されているなんて、まさかの出来事でした。


そうです。中国ではマフラーなんか落とそうものなら、たちどころに踏みつけられ、道路清掃業者がゴミとして持って行ってしまいますし、郵便局のようなところで忘れたら、当然、その日一日待って誰も取りにこなければ、速攻でゴミ箱行きです。


私は先達て、スポーツジムのロッカーに、靴下を片足置き忘れて帰ってしまいました。家に帰って洗濯機に入れるときに、「あ、片方ない!」と気づいたので、翌日、ジムのスタッフに聞いてみました。「14番のロッカーに靴下片方忘れてませんでした?」「ああ、あったみたいですよ」「え!ありますか?!」「でも、たぶん捨てたと思います」orz


その日一番最後に14番のロッカーを使ったのは私なのに、取って置いてくれませんでした。以前、手袋をカフェの椅子の上に置き忘れてしまったときも、取って置いてくれませんでした。


日本のスポーツジムやカフェで同じものを置き忘れたりしたら、きっと数日くらいは保存しておいてくれるように思うんですが、どうでしょう。


さて、私がよく行くレストランで、あるお客様が財布を忘れたと言って、戻ってきました。「この席に座って、この席でお勘定してすぐ帰ったから、絶対にここに落ちてるはず」と言って探しましたが、見つかりません。中国人のお客様だったのですが、彼はこの店のスタッフを泥棒呼ばわりして、スタッフの身体検査をしろ、とオーナーに言い寄りました。この店のオーナーは日本人で、お客様の忘れ物を見つけたら、着服せずにオーナーに報告するよう教育しているので、「恐らく私の店で失くされたのではないと思うのですが…」とやんわりなだめたのですが、「俺の勘違いだと言いたいのか!」と客は激してしまい、大騒ぎになりました。従業員更衣室まで覗いて探していたようですが、見つかるわけがありません。この店の従業員はこれまでお客様の忘れ物を見つけると、自転車で追いかけていくほどしっかりと教育を受けているので、まさか着服してはいないだろうと常連客はみな思っていました。でも、中国人にはそれが信じられないのですね。


手元をひとたび離れてしまったものは、中国ではもう帰ってこないと覚悟を決めなければいけません。先日、あるカメラマンが、満員バスの中で、一眼レフのカメラをすられました。商売道具を盗まれるなんて、よほどボンヤリさんなんだとおもうのですが、気が付いたら、肩掛けケースだけが肩から吊る下がっていて、中身は空っぽだったそうです。自転車は、まず誰もが一度は盗まれた経験を持っていますし、置き忘れたものが戻ってこなかったという経験も多くの人が味わっています。


日本は、物に対する思いが深い国民ですね。物を大事にしなさい、と育てられいるからなのでしょうか。どんなものでも、置き忘れたりすると、割とちゃんと管理してくれてあったりしますよね。安物のどうでも良いようなものであっても、しばらくは管理されているでしょう? そういう細かな気遣いって、いいなぁと思います。


ちょっと余談ですが、私は最近、家の中のものを減らそうと、部屋を出るたびに、不要品をひとつ持って出て、処分するという習慣をつけました。際限なく増えていく物を減らして、ゆったり暮らしたいと思うようになったのです。


まだまだ使えるけれど、たぶん二度と使わないものとか、高かったけど使いにくくてもう嫌になってしまったもの、人からいただいたのだけど好きじゃなくて使わないもの、3つも4つも同じものを持っているからいくつか処分しようと思ったものなど、部屋を出るたびに1個ずつ持って出て、マンションの外のゴミ置き場に置きます。ゴミ箱の中には入れません。ゴミ箱の外に置いておくんです。すると、ものの5分も立たないうちに、誰かが持って行ってくれるのです。先達て、壊れた暖房機を捨てました。私が20歩歩いて、ゴミ置き場を振り返ると、もうありませんでした。ACEで買ったキャスター付きボストンバッグが偉く重たくて、手放す決心がついたので、ゴミ置き場に持って行きました。そしたら、「おネエさん、それ要らないの?」とおばちゃんが声をかけてきました。「はい、ちょっと重過ぎるので、もう使わないのです」と言うと、「じゃあ、私にちょうだい」とおばちゃんが引き取ってくれました。CDが回転しなくなり、ボリューム調節もバカになってしまったCDラジカセを捨てたときも、どこぞの爺さんがやってきて、すぐに拾って帰ってくれました。あれは、きっと電気修理部に持ち込んで売るんだと思います。


物を捨てることに罪悪感を感じるのは、誰も同じだと思いますが、こうやって欲しがってくれる人がたくさん周囲にいると、ありがたいです。捨てるときも、拾う人のことを考えて、取り扱い説明書もいっしょに捨てたりして結構気を使っています。「捨てないで売ったらいいのに」と中国人は言いますが、まあ、それはちょっと手間がかかるし、面倒だし、というので、私は捨てちゃってますが、そう考えると、私が過去に失くした片足の靴下とか、手袋も、どこかで誰かが何らかの方法で業者に引き取ってもらっていたりするのでしょうか。本当にあらゆるものが、フリマに並ぶ国なので。先達て、本当のがらくたフリマに行ったら、パソコンコーナーに並んでいたパソコンは、ほとんど日本のメーカーのものでした。日本人手放すのが早いということなんでしょうね。


そのフリマ、履き潰したようなスニーカーや、5〜6年前の日本のファッション誌、そうとう年季の入っているコンセントの延長コード、レストランから払い下げられてきた縁の欠けた灰皿、先の曲がったフォークやナイフ、つぎ跡だらけのリュックサック、ぼろぼろのマフラー、ペンキだらけの作業着、アダプター各種、自転車の中古サドル、中古ペダル、私が先達て捨てたばかりの暖房器具と同型の暖房器具も売られていました。うちのひょっとして「この子?」と思ってしまったくらいでした。こんなところで買われていくなら、幸せだなぁ、と思った出来事でしたが、盗難品なども混じっているんでしょうね。良いことなのか、悪いことなのか、判断がつかないところが、いかにも中国的だと思います。