ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

紐解けばスゴイ国

中国のいろんなところを旅しています。ことにこの3年ほどは、休みの度に旅行をしていました。


旅から帰ると、写真を整理しながら、見学してきた場所についていろいろと調べるようにしています。そうすると中国という国に対する理解と尊敬が深まるのではないか、と思っていたのですが、知れば知るほど分からないことが増えていき、知れば知るほど、「現代中国」の愚かさを再認識してしまうことが、最近分かってきました。


史実として承認されている中国の最も古い時代は、「殷」の国ではないかと言われていますが、紀元前1600年ごろの国ですよ。その頃日本は縄文時代でしたね。そんな時代にすでに王朝が出来ていたのですから、大した国だと思います。それ以前の時代は、神話の時代のようですが、これから更にいろんなものが、中国各地でボコボコと出土して、次第にいろんなことが分かってくるのではないか、と期待しています。


旅に行くと、とりあえずその土地にある「世界遺産」を見たりしますが、およそ面白いものはありません。中国は今、地方と都市部の経済格差を埋める為、地方の観光化にものすごく力を入れていて、ユネスコ世界遺産登録をじゃんじゃんしています。ひとたび世界遺産として認められると、そこは一大観光地に生まれ変わり、チケット売り場から延々と1キロばかり歩かされ、ようやくお宝にたどり着けるように改装されてしまいます。沿道には店が並んでいたり、電気自動車でお宝まで○元、なんて寸法で商売をしているわけです。


中国人は歩くのをあまり苦にしないのか、不満1つ漏らさず、お宝までの道のりを楽しんでおられるようですが、こちとらそんな悠長な旅のスケジュールは組めないので、非常に迷惑な観光化です。また、見栄っ張りな国なので、やたらキレイに改装してしまうので、ありがたみも半減です。もう少しどうにかならないものでしょうか、あのセンス。


中国三大石窟「敦煌莫高窟」「洛陽の龍門石窟」「大同の雲岡石窟」のすべてを昨年から今年にかけて見てきました。いずれも世界遺産に登録されています。確かにすばらしい石窟で、特に敦煌莫高窟は一度見ただけではその素晴らしさを理解できるものではないな、と思いました。しかし、本当に心に残っているのは、敦煌莫高窟だけで、他の二つは、なんだか人を拝みに行っているような感じで、観光客によってかなり品格を損ねられているような気さえしました。私もその観光客の一人ですから、偉そうなことは何一つ言えませんが、ここまで「カムカムエブリバディ」にしなくても良いだろう、と思うのです。


莫高窟は、シルクロードの大都市・敦煌にあって、歴史的価値の高い石窟です。なぜ莫高窟が他の石窟よりも素晴らしいと思えたか、というと、国をあげてこの遺産を保護しようとしているからです。敦煌には、国際線の乗り入れがありません。一時、臨時で国際線の就航を許可したりしていたようですが、今はありません。それは、この砂漠の地に大勢の観光客が容易に出入できるようになってしまうと、瞬く間に自然が荒らされ、石窟自体も風化しかねない状況にあるからだそうです。日本人は、NHKシルクロード世代の根性が据わっているので、日本人観光客の数はかなりの数ですが、皆、西安などから国内線に乗り換えてわざわざ来ているのです。すごいですね、日本人って。


莫高窟も数年前に比べれば、かなり観光化されてしまっていて、昔の風情を知っている人に言わせると、「がっかり」なところになってしまったそうですが、それでも、洛陽の龍門石窟などに比べると、上手に管理されています。数え切れないほどの石窟があり、すばらしい壁画が残されていますが、一般に開放されているのは、そのほんの一部の一部の一部だけで、すべてを今生で見終えることは到底不可能でしょう。敦煌はそういう神秘的な部分がとても素晴らしいと思えました。


壁画というのは、とても面白い遺産で、宗教壁画だけでなく、農耕の様子や遊牧の様子や、生活そのものの様子などを描いたものが、中国には数多く残されています。例えば、石窟に限らず、墓などにも壁画があったりします。この世の権力・栄華をあの世でも、と願う人々の思いが、壁画には込められていて、その当時の最高の暮らしぶりが手に取るように分かるのです。また、中国の古墓は、そのほとんどが盗掘に遭っているため、お宝のほとんどが盗まれていますが、壁画はどうにも盗みようがないもので、その点でもこれから未来に向けて、壁画だけは大事に保護していって欲しいものだと思わずにいられません。


さて、何が言いたいか、というと。


歴史的に貴重なさまざまな遺跡が今日も発掘され続けている中国にあって、その保護よりも、工業化に向けての予算組みの方が重要になっているという悲しい事実に、ここで苦言を呈したいのです。


石油化学工場からの排煙や排水が、空気や土壌を汚し、人に害を与える状況に、すでに多くの中国人が気づき始めていますが、利権を伴うこれらの開発に多くの地方政府は、どんどん資金を投入していきます。付近には、さまざまな遺跡があり、またそういう場所というのは、水もきれいで多くのめずらしい野鳥が生息していたり、植物も豊富でまだ図鑑にも載っていないような種類のものもたくさんあるようなのです。ところが、そういうものを守っても、一円の利益にもならないとなると、「ここには何もなかったことにしよう」と誰かが決めてしまうんですね。


でも地元の人たちはみんな知っています。みんなでデモをやって、闘ったりしているのですが、大きなムーブメントが起きない限り、おそらくこれらは皆、踏み潰されてしまうのでしょう。とても残念なことです。


冒頭で「殷」の国のことに触れましたが、中国は史上最低の時代からどうやったら抜け出せるのでしょうか。かつて日本が足元にも及ばないほどの王朝を築いたこの国で、本当の意味での統一がかなうのは、いつのことになるのでしょうか。