ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

帰国みやげの選び方

ある日本人駐在員の初老の男性から、変な質問を受けた。
「今度、ウチの会社の中国人部長が出張で日本へ行くんですが、どんな手土産を持って行ったら日本人が喜ぶか尋ねられてしまって、返事に困っているんですよ。何かないですかね」


中国人なのだから、日本人より中国みやげについては詳しいはずなのに変な質問をするものだ、と思ったが、よくよく考えてみれば、中国の方々にとって、日本人の嗜好は全く未知の領域のもので、何を喜ぶかを考えても、さっぱり分からないのだろう。


その場に居合わせた日本人数人でいろいろ話し合ってみたが、一向に結論が出ない。工芸品などはそれなりに見栄えはするが、趣味に合わないものを贈られても、「処分に困る」と厳しいご意見。しかし、それは現実だ。数年でも中国で暮らしたことのある人が、地元の工芸品をもらえば、懐かしいという感情が付加価値となって、大事にしたりするかもしれないが、中国に全く興味の無い人にとっては、「どうしろって言うんだ、この置物!」という世界である。これは、万国共通だろう。


また、食品類は日本ではとりわけ評判が悪い。まず安全・衛生の面で、中国の食品は嫌がられる。こっちで暮らしていると、実はそれほどナーバスにならなくても平気だと思っているものだから、ちょっとおいしいお菓子などをうっかり持ち帰ってしまうことがある。しかし、おおむね「大不評」だ。私の実家には、4年前の中国の菓子がまだ食品倉庫に眠っているらしい。娘の買ってきたみやげなので、捨てるにしのびないという親心なのだろうが、買って帰った本人としてはかなりばつが悪い。


中国と言えば「ウーロン茶」だと言う事で、お茶をみやげにする人も多い。ところが、これは一部の人にはウケルが、そもそも家でお茶を淹れて飲む習慣すら失われつつある日本で、どれだけの人が「ウーロン茶でも淹れるか」と湯を沸かすであろうか。ダイエットに挑戦中の女性なら、多少は喜ぶかもしれないが、特にご年配の方々には「ウーロン茶」の味というのはどうも馴染めないとおっしゃる方も多い。


そのほか、シルク製品だの中国結びの小物だの、刺繍ハンカチ、果てはパンダチョコレートまで、観光大国中国ならではの土産物ラインナップは数知れないが、その実、商用などでの手土産となると選択に困るのが普通である。また、年に数回、日本に帰っている駐在員さんたちは、家族へのみやげには本当に頭を痛めているらしい。


今回の結論は、日系企業が製造販売している中国の菓子、ということで落着した。衛生管理の面での心配は不要だし、中のお菓子が個別包装になっているので、会社でばら撒くのにも好都合。パッケージもきれいで値段も高からず安からず。結局、日本人の「つぼ」は、日本人にしか分からないということなのだろう。


私は、幸いにして、友人のほとんどが中国語を勉強しているような「中国通」の方々ばかりなので、帰国みやげでは随分ラクをさせてもらっている。帰国前にちょいとメールして、「何か欲しいものある?」と聞くと、たいてい、「また近々行くから、何にも要らない」という答えが返ってくる。そういう人には、空港でちょっと気の効いたオシャレ小物でも買って行けば、「これ高かったでしょう。市場のものと質が違う」とちゃんと見抜いてくれる。中国語を勉強している人は、こちらの書籍を欲しがる場合もある。これは書名を聞いておけば、今やネットで買える時代なので、こんなにラクな買い物はない。そのほか、これまでに頼まれたものでは、「皮膚炎に効く漢方で、北京同仁堂から出ている●●って薬があるから、大量買いしてきて」とか、「子供がパンダが大好きなんで、ぬいぐるみ一匹頼む」とか、「芝麻醤(中国のゴマペースト)、一瓶頼んでいいかな、重くて悪いけど」とか、実に具体的なものばかり。恵まれた友人関係に感謝している。