ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

もさ

猛者と書いて、「もさ」と読む。中国語が語源かと思ったが、辞書を引いたら、“健将(jian4jiang4)と言うらしい。

第一の猛者
 夕方5時すぎ。そろそろみなさん退社の時間。バタバタと慌しいオフィス棟に、宅配便の荷物を積んだ台車が一台やってきた。そこに4段ばかりの下り階段があって、宅配便の中国人のお兄ちゃんは、荷を台車から下ろすのが面倒だったようで、クルリと階段に背を向けて、バックで階段を下りようと試みた。1段目が下りられず、台車もろとも敢え無く転倒。お兄さんは仰向けで台車と積荷の下敷きとなる。
 猛者は、ここからがすごいのだ。お兄さんはベンチプレスのように台車のハンドルを握りなおし、「はっ!」という気合と共に、荷物ごと台車を起こし、自らも階段の上に起立した。すごいもの見ちゃった。―――中国人、どこまで横着者なのだ!


第二の猛者
 ビルのA棟とB棟をつなぐ渡り廊下。屋根がドーム型になっているので、喋ると声にエコーがかかる。隣りの事務所で働いている歌の大好きな中国人女性社員が、今日も鼻歌で渡り廊下を歩いていた。歌がサビに入ると、彼女は渡り廊下の中央で、両手を大きく広げて、♪おおおおおおお〜と大音量で熱唱し、最後まで歌いきると、自分で拍手をして、お辞儀して、B棟のほうへ消えていった。
 女猛者だ。強いぞ彼女。通行人がいようがいまいが、一曲歌い上げるまでは道を譲らんからな。


第三の猛者
 通勤ラッシュの地下鉄内で、まずハンドバッグから爪きりを取りだし、左右10本の爪をバッチンバッチン切り出す女の子。切った爪がどこへ飛ぼうがお構いなし。切り終わると、今度は鏡と鼻毛カッターを取り出し、鼻の下を思い切り伸ばして鼻毛切りを開始。切れた鼻毛の行方はわからない。そして更に、バッグの中から弁当箱を取り出して、中に入っていたお粥をスプーンですくって食べ始めた。食べ終わると、弁当箱をバッグにしまい、次に登場したのがタクシーの領収証の束。ロールペーパーに印刷されているのを、何枚分もまとめてもらってきたらしく、手で一枚一枚切り取る作業を開始。100枚近くあろう領収証が、ものの10分でキレイに整理されてしまった。通勤電車でこれだけの作業がこなせるなんて、あっぱれな猛者だ。しかし、あのバッグの中身がとても気になる。ほかに何が入っているのだろう。見たい見たい!