ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

結婚して子供を持つ幸せ

中国人の若いお友達がいっぱいいる。なぜか、揃いも揃って独身である。年齢は、だいたい25歳から35歳くらいで、男女問わず、なぜか独身。


彼らは、みんな仕事が終わってもすぐに家に帰らない。なぜかと言うと、親がうるさいからだ。何にうるさいかというと、要は、「早く結婚しろ」と言うのだそうだ。


本人にしてみれば、一生懸命働いて、楽しく友達と遊び、趣味や勉強を謳歌して、健康的に明るい毎日を送っているのだから、「余計なお世話だ」と言いたくなるのだろうが、中国の親たちは、なんせ子供の結婚についてやかましいらしい。


夕食のときに、会社での出来事や友達の話などをすると、途端に親の機嫌が悪くなる。
「あんた、そんなに一生懸命働いて、どうするの? 仕事にばかり熱中していると、結婚相手が見つからなくなるよ」
「女友達とばかり遊ぶのはやめなさい。だから、お相手が見つからなくなるのよ!」
と、まあ、こんな小言を言い出し、それが延々と続くらしい。本人は、たまったものじゃないから、早々に食事を切り上げ、自分の部屋にこもって、パソコンなんぞをやって遊んでいると、また、親がやってくる。
「ネットもいいけど、この間のお見合いの話、考えたの? 先方には何て返事すればいいの?」
と追いかけてくる。
「うるさいな。今、忙しいから後にして!」
などと言おうものなら、そこからまた小言が始まるから、渋々、
「次の日曜に会うよ」
と答える。


それで、先達て、私の友達が見合いをしてきた。
「もうすぐ春節旧正月)のお休みに入るから、親は、親戚の前で、“この子もようやく身を固められそうなのよ”って自慢したいだけだと思う」
と友達。はは〜ん、この年末のあわただしい時期にわざわざ見合いをするというのは、そういう理由があったのか、と納得した。


「で、どうだったの? お見合い」
「……」


私たち日本人が考えるお見合いとは、ちょっと高級な日本料理の店かなんかで座敷を借り切って、当人同士と双方の親、そして、仲介者などが立ち会って、とりあえず自己紹介ごっこをし、食事が済んだら大人は退散。
「あとは、若い人たちだけで……」
となり、帰宅後、
「どうだった? どうだった?」
と根掘り葉掘り家族から質問攻めに遭い、
「とりあえず、また来週の日曜に会う約束してきた」
という展開。
その場合、お母さんが仲介者に即電話して、
「本人もまんざらじゃないようですので、しばらくお付き合いしてみたい、と」
「それは、良かった。じゃあ、先方様にもそのように…」
なんて、段取りを踏んで、うまくいけば、ゴールイン。


ところが、私の友達いわく、
「中国の見合いって、すごくラフなんですよ。親も来ないし、仲介者も来ない。二人で適当にデートして、帰ってくるだけ」。


「で、次回、また会おうって約束してきたの?」
「いや、ぜんぜん……」
「え、じゃあ、どうなるの?」
「さあ?」
「さあ?って。先方はなんて言ってるの?」
「なにも。ぜんぜん連絡来ないもの」
「まじで?!」
「その気がないのよ、向こうも。私に対してその気がないんじゃなくて、結婚に興味ないんだと思うよ」


要は、彼女と、そのお見合い相手は、全く同じ境遇なのだ。周囲の大人たちだけが熱くなっていて、本人同士は、お見合いで結婚する気など、さらさらないのだ。


なぜ、中国の親たちは、こんなに結婚を急かせるのだろう。結婚したらしたで、すぐに「子供、子供」と騒ぎ出すのがお決まりのパターンであるところから見ると、この問題の着地点は、「子孫を残すことへの強い執着心」のような気がする。


中国はまだまだ貧しい。いや、都会で暮らす人たちは、ずいぶん豊かになっては来たが、意識が「貧しい」のである。将来への実態のない不安を常に抱えていて、子供を残すことで、自分の将来への不安を打ち消そうとする傾向にある。
「これで、寝たきり老人になっても、子供が面倒を見てくれるだろう」
という幸福の未来予想図を描くのだと思う。


それが、子供は仕事仕事で朝から晩まで働き、休日は休日で同性の友達とばかり遊んでいる。気づけば、我が子もまもなく30歳だ。これは、まずい! と考えるのだろう。そして、自分の代での心配は言うに及ばず、我が子が年をとった時の心配までし始め、収拾がつかなくなって、毎日家族会議を開かざるを得ない状況になっている、というわけだ。こういうプレッシャーを日々、慢性的に受けている若者達は、異性の友達と知り合うと、まず品定めから入ってしまう。女性の場合だと、まずルックス。そして、収入。将来性。マンションを持っているかどうか。そして、最後が「内面」。だから、異性と会うのが、当然しんどくなってくる。初めて会った時から、意気投合すれば話は別だが、そうじゃないとなると、かなりややこしい。
「異性からメールをもらって、返事をすると、その気がある、という意思表示になる」
と友達から聞いていたが、なるほど、よく考えれば、納得のいく話だ。


親が、悪いとは、言わないが、どうも昨今の状況は、「結婚できないスパイラル」を生み出しているように思えてならない。


中国の若者たちよ。キミらかわいそうだが、闘いなさいよ。
世の中を変えていけるのは、今の中国では、キミたち若者しかいないんだよ。


40過ぎのおっちゃんおばちゃん達は、もう変わらんだろうな、と思う。固定観念が強すぎて、それ以外の道を選択するのは、「人生の落伍者」に値する、という価値観を持ってる。でも若い子たちは、ちがう。一人っ子で、わがまま放題に育っていて、世間では手を焼いているようだが、私は彼らが持っているエネルギーを応援している。これまでの中国になかった、「自由」というエネルギーを持っているからだ。この国が変わるまで、あと20〜30年かかるかもしれない。でも、必ず変わる。


結婚していない中国の若者が、親に反発するのは、とてもいいことだ。もっとやれ、もっとやれ。