ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

野菜と果物と甘いマヨネーズ

昨日のコメント欄に、中国の甘いマヨネーズの話が出ました。それで、なぜ中国のマヨネーズが甘いのか、私なりに考えてみました。


以下、私の推測。


中国人は、もともと中国医学の考え方に基づいて、むやみに生野菜を食べませんでした。例えば、夏に体の熱を取り水分を補給するために、生のキュウリやトマトを齧ったりすることはありますが、それ以外の季節に、レタスのサラダだの、キャベツの千切りだのを食べる習慣というのは無かったわけです。


ところが、果物については、火を通すことなく、バンバン食べます。きれいなかわいらしい20代のOLさんが、通勤バスの中で立ったまま、みかんの皮をむいて食べていたり、若者が集うショッピング街の雑踏で、茶髪のお兄ちゃんが青い桃を丸かじりしていたり……。お菓子やジュースの代わりに果物を食べているという感じがして、私には彼らの感覚が、とても新鮮で健康的に見えました。小学生でさえ、自分のおこづかいでりんごを買って食べたりするんです。街には有り余るほど、スナック菓子や甘いお菓子が並んでいるこの時代になっても、です。いいことですよね。


中国料理というのは、面白い食文化を見せてくれます。こってりした酢豚にパイナップルが入っているのは、たんぱく質を分解して消化を助けるためですし、激辛の炒め物に、体の熱を取るキュウリが入っていたりします。また、これは伝統的な料理ではありませんが、生クリームのケーキの脇にプチトマトが彩りに添えられていたりするのも、とても面白いです。元々、トマトに砂糖をかけて食べる国民ですから、ケーキの添え物にプチトマトがあって、どこが悪い?! ということなのでしょう。


レタスは鍋料理屋さんの定番メニューです。羊肉のしゃぶしゃぶにレタスを入れて食べます。しかし、ご年配の方ともなると、レタスのサラダは絶対に食べない、という人もいます。キャベツも同様です。ホイコーローのキャベツはモリモリ食べるのに、トンカツの千切りキャベツには一切手をつけません。


ところが、若い世代を中心に、洋食レストランや日本人経営のレストランなどで、サラダを食べる習慣が広まり、「生野菜は体にいい」という人が増えました。日本のように、いろいろな種類のドレッシングがあるわけではなく、ほとんどがサウザンアイランドドレッシングですが、おそらく、野菜サラダを恐る恐る初めて食べた人たちが、「甘かったら、おいしいかも」と思ったのだと思います。つまり、日常的に生で食べ慣れているものの代表が果物であったことから、果物のような甘みがついていれば、抵抗なく野菜サラダが食べられると考えたのではないか、と。


キャベツにマヨネーズをつけて食べると、やけにマヨネーズの味だけが舌の上に広がりますよね。キュウリにしても、どうしたって、口の中でマヨネーズとキュウリとが分離します。ところが、これに甘みが加わると、酸味が緩和されて、マヨネーズの強烈さが消えるのです。本来、甘みと酸味は相性の良いものですから、何の先入観もなく、このマヨネーズを受け入れたら、砂糖入りのマヨネーズというもの自体は、それほど悪いものではないのかもしれません。


中国人経営の洋食レストランに行くと、かなりの確率で、キャベツの千切りに甘いサウザンアイランドがかかってきます。私は、キューピーマヨネーズで大きくなったので、どうしてもこの甘いキャベツの千切りが受け入れられませんが、中国人はきれいに平らげます。きっと、なんの変哲もないただのキャベツが、果物のような甘みを帯びて、おいしく食べられるのでしょう。生で食べる「野菜」と「果物」には境界線がない。それが、中国のマヨネーズを甘くした理由なのではないか、と私は考えています。


さて、ちょっと余談ですが、実は、甘くないキューピーマヨネーズが、中国でも今、人気です。それはおそらく、先述のとおり、手軽に甘いお菓子が口に入るようになって、それほど甘いものに飢えなくなったことと、健康に気遣って糖分を気にする人が増えたこと、そして、いつの時代にも、どの国にも、「甘いものは苦手!」という男性がたくさんいること、などが原因なのではないかと思います。スーパーなどで売られているキューピーマヨネーズのパッケージには、甘いマヨネーズと甘くないマヨネーズを識別するために、大きく表示が印刷されています。