ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

形容詞クイズ

例のレストランの女の子。相変わらず日本語に夢中になっている。


今日の質問は、
○「承ります」ってどういう意味?
○「通常」って、なんて読むの?
○「あめ」って、何?


「承ります」の意味は、とても分かりやすい。受ける、聞くの謙譲語。これですぐに意味は理解してもらえる。でもどんなときに使うと便利なのかが、わかりにくい。


「お客様が来て、メニューを見ています。あなたは注文を聞きます。いつも何と言いますか?」
「何もいいません」
「そう!そのときに、「承ります」を使います。ご注文を承ります、と言います」
「ああ!!」


「お客様がお店でパーティをしたいと言いました。あなたは何と言いますか?」
「いつですか? 何人ですか?」
「そうですね。予約を受けますね。そのときに「承ります」を使います。何と言いますか?ご予約を……?」
「ご予約を、承ります」
「そうです!」


一件落着。


「通常」の読み方は、「つうじょう」。中国人には比較的苦手な長音と拗音の混在。でも、彼女は一発で聞きとってくれた。


「じゃあ、意味は? 日本語で言ってください」
「う〜ん、う〜ん、……つうふ?」
「つうふ、じゃないよ。ふつう!」
「あはは……。ふつう!」


ちゃんと別の言葉でも言える。すごいすごい。彼女も調子に乗ってきた。


「最近、yueyaさん、あまり食べませんね」と日本語が流暢な男の子のバイトさんが声をかけてきた。
「ああ、最近ね、咳が出るので、一日中あめを舐めてるから」


ここでまた、くだんの彼女が飛び込んできた。「あめって何ですか?」


中国語で答えを言ってしまったら、「あめ」という単語はその場で忘れてしまうだろう。まずは、「あめ。あめ。あめ。あめ……」としつこいくらい何度も聞かせる。手でアクセントの高低を見せながら、何度も言って、リピートさせる。すると、彼女は、「雨?」と中国語で言った。「それは、あめ ̄_」。そこで、形容詞クイズ。


「あめは、甘いです」
「あめは、甘い?」
「あめは、小さいです」
「あめは、小さい?」
「あめは、丸いです」
「あめは、丸い?」
「あめは、赤いです。黄色いです。白いです。茶色いです。いろんな色があります」
「わかりました!」
「だめ、まだ、答えないでください。あめは、どんなものですか?」
「あめは、……あめは、あめは、食べ物です」
「それから?」
「あめは、おいしいです」
「そうですね。それから?」
「あめは、あめは、あめは……」
「あめは?」
「あめは、薬の……薬の……」
「薬の?」
「薬の時もあります」
「そうですね。あめは、そういうものです」
「わかりました〜!」


このくらいのレベルの学生に、直説法で教えるとき、単語の意味を思い出させるのに、形容詞クイズはとても良いと実感。正解も、母語で言わせないで、日本語で説明させると、語彙も増える。分からない単語を主語にいちいち入れて言わせると、「あめ」という単語が記憶の中に定着する。


「さっき、私が彼と話したのは、こういう意味です。私は咳が出ます。あめをたくさん食べました。だから、ごはんがたくさん食べられません。」
「わかりました〜!」


よかった、よかった。


「学校の授業は、全部中国語でやるので、家で復習しないとしゃべれるようにならないんです。でも、バイトで疲れてしまって、結局試験の前に勉強するだけで、ぜんぜんしゃべれるようにならなくて……。だから、yueyaさんの教えてくれる日本語の方が、私にとっては自然に頭に入るし、忘れないんですよ。あめも、学校で教えてもらった単語だったけど、聞いてもすぐに意味が分からなかった。聞いたことあったけど、わからなかったんです。簡単な単語なのに、意味が分からないのが一番悔しいんです。でも、もう二度とあめだけは、忘れません。ありがとうございます」
と彼女。もちろん、これは全部中国語だった。


「じゃ、今の話を、日本語でどうぞ!」
「だめです〜(笑)」