ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

“r”の発音

http://fangjiu.or.tv/hskgoukaku/(中国語本質実践講座)
このページのず〜っと下のほうに、中国語の“r”を発音するときの舌のカタチを、手のひらを使って見せた写真が出ている。その写真の上に、この「中国語本質実践講座」をやっている阿部芳久さんという方が、音声解説をしている。


ゼロレベルから、わずか9ヶ月でHSK8級に合格したという氏は、自信たーっぷりの語り口調で、中国語の学習方法を説くのだが、たぶんこの人のことを嫌いだと思う人も結構いるだろう。私は、そんなに嫌いじゃない。本当に9ヶ月でHSK8級に合格したなら、天才だと思うから、天才ならこのくらいエバってても、別に気にならない。9ヶ月で8級に合格した人を演じているのだとしても、このくらいエバったほうが、超人じみていていいかもしれん、と思ったりする。


だいたい、こういう宣伝に引き込まれる人は、弱い人間が多い。たとえば私のようにw。自分が単に怠けているだけなのに、やれ「時間がない」だの、やれ「自分にあったテキストが見つからない」だのと言い訳にするタイプの人は、このくらい高圧的に言われないと、果てしなくダラダラ怠けるのだ。阿部氏は、その辺のツボを抑えている。すばらしい戦略家だ。


まあ、そんなことはともかく、冒頭のURLの“r”の発音について、話をもどそう。


彼の教える“r”は、「り」とか「い」とか言う音よりも、「じ」というカンジ。故意に舌を震わせ「じ」に近い音を出させる「摩擦音」の指導をしている。


私も実は昔、「じ」に近い音で“r”を出していた。初めて勉強したテキストについていた音声教材が、「じ」に近い音で発音していたからだ。この阿部氏の言うような、強い摩擦音を出す“r”だった。


ところが、その後、中国語学校に入学して、中国人の先生に、「り」や「い」に近い音に矯正された。スピーチコンテストに出ることになって、細かい発音指導が入ったのだ。


そのとき直された音は、全部で四つ。“qu”“zhi”“xiong”そして、“r”だった。
“qu”は、唇の形が丸すぎて、息も弱すぎだったことが分かった。
“zhi”は、舌の位置が奥過ぎだったことが分かった。
“xiong”は、「しおん」と発音していたのだが、ネイティブの発音は、「しゅん」に近い曖昧な音だと分かった。
そして、“r”は、前述の通り、強い摩擦音を指摘された。


いずれも日本人がつまづきやすい発音なだけに、このときの発音指導のおかげで、以来、誰からも発音だけはきれいだと褒めてもらえるようになった。“r”についても、中国に来てから中国人に直されたことは一度もない。


しかし、阿部氏の“r”の発音指導は、完全に「り」や「い」に近い音の“r”を否定しているかのような誤解を招く指導だ。「じ」に近い音で強い摩擦音を発する中国人も実際にいるのだろうし、以前、南の方の発音は「じ」に近いという話を聞いたことがある。「日本人」という発音を、「じーべんじぇん」と言っている中国人と話したこともある。台湾人の超美人の私の親友は、「ずーべんぜん」と言う。だから、間違っているわけではないけれど、彼の強調の仕方は、ちと行き過ぎな気もするのだが……。


ここでは、「舌の形」という言葉を強調しているから、その点だけ見れば、間違いではないと私も思う。ただ単に、舌を上に持ち上げるだけでは、“r”の音は出にくい。舌を持ち上げた上で、少し左右から舌を丸めるような意識がないと、“r”は出てこない。このとき、舌がどのくらい緊張しているかで、摩擦音とやわらかい音との違いが出るのではないかと、私は認識している。しかし、あんなに摩擦音を強調されると、みんな「じーべんじぇん」って発音するようになっちゃうんじゃないの? いいのか? まあ、いいんだけどね。中国で暮らしていると、そんなこと構っちゃいられないくらい、地方色豊かな発音や抑揚に出会うから。


さてさて、それじゃあさぁ、という話に転換していくけど、
標準語の発音としては、どちらが王道なのだろう? 
私は、私の母校の恩師の指導の方が王道な気がするなぁ。