ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

ラッピングセンス

フランス資本の某化粧品メーカーの口紅を買った。とてもきれいな紙袋に入れてくれて、すごくうれしかった。それで、知り合いの奥様(日本人)のお誕生日に、同じものを贈ろうと思って、今日また買いに行った。同じ店員さんがいたので、また彼女に言って、色を選んだ。


ところがいざ買う段になったら、袋に入れてくれない。袋を切らしているのかな、と思って、
「袋あります?」
と聞いたら、
「ああ、ありますよ」
とレジ下の小引き出しを開けた。
そこには、ジッパー式の半透明のポーチに入った試供品がびっしり収納されていて、彼女はそのうちの一つを、取り出した。そして、試供品を全部ポーチから取り出して、私の買った口紅を入れた。どうにも安っぽい。口紅が、試供品に見えてしまう。
「あのう、これ、誕生日プレゼントなんです」
と言ったら、
「じゃあ、これ一個おまけしておきます」
と試供品のクリームをポーチに放り込んだ。


ああ、感覚がまったく違う。ブランドメーカーの紙袋を、大事に取っておいたりするのは、日本人の感覚なんだろう。紙袋より、このポーチのほうが、高級な感じがすると、中国人は思うのかもしれない。


紙袋が欲しいと言おうかどうしようか悩んだのだが、そのとき、この口紅をあげる人のことをふと思い浮かべた。中国生活のとっても長い女性で、もうおばあちゃんみたいな年の人である。もしかすると紙袋より、こっちのポーチのほうが喜ぶかもしれないな、と思い直した。


結果は、大成功だった。


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去年、あるデパートでクリスマスプレゼントを買った。クリスマス専用のラッピングをしてくれるというので、ラッピングのカウンターへ行った。いろいろなラッピングペーパーと色とりどりのリボンやシールが並べてあって、「お好きな組み合わせで包装いたします」と書いてある。


列に並びながら、他の中国人がどんな組み合わせを選ぶのか見ていたら、赤い紙に金色のリボンをかけてもらっている人が9割だった。「結構、オーソドックスなところが好きなんだなぁ」と思って、眺めていた。


私の番が来たので、私は、
「赤い紙に赤いリボンで」
とお願いした。店員が驚いて、
「赤に赤を組み合わせるんですか? ほかのリボンもありますよ」
と言う。
「いえ、いいんです、それで」
と答えると、店員は、不思議そうな顔をしながら、ラッピングを始めた。
ところが、リボンを結わえた瞬間、
「ああ、この組み合わせ、素敵ですね〜。意外でした」
と褒め始めた。
他の店員にラッピングしてもらっていた中国人客が一斉にこちらを見た。
そして、
「あ、私も金のリボンはやめて、赤にして!」
と何人かが、まねをした。


なんだかちょっと偉くなったような気分がして、私はフフンと思った。ラッピングが終わって、その場を離れ、別の買い物をして、再びそのラッピングコーナーの前を通った。ラッピングサンプルの中に、赤い包装紙に赤いリボンをかけた箱が、早くも加わっていた。そして、お客さんがそれを選んで包んでもらっている最中だった。アイデア料、もらえば良かった。


気分上々で、プレゼントを持って、友達のところに行った。だいじな男友達。
「どうぞ!」
と手渡したら、
「おお! びっくり! オレなんにも用意してない。ごめんな〜」
と言いながら、バリバリ包装をやぶって開けた。
「んもう、サイテー、あんた!」
と言ったら、友達は、
「???」
という顔をした。