ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

最近、読んだ本【福祉5】

新書470発達障害 境界に立つ若者たち (平凡社新書)

新書470発達障害 境界に立つ若者たち (平凡社新書)


社会の中で、とかく疎外されがちな発達障害の人々。私の身近にも発達障害の人がいて、どう接したら良いかわからずにいました。


この本は、発達障害に類するさまざまな障害者ひとりひとりにスポットをあてて、かつてA学院という発達障害の若者たちに学習の場を与えてきた学校の元教師が著した本です。


初めは熱血教師だった彼が、経験を重ねるうちに、「克服できない障害」の現実を知り、あきらめるのではなく、彼らに合わせた社会の在り方を考えるようになっていきます。残念ながら、少子化の影響を受けて、A学院は閉校してしまいますが、この本が世に出たという事実だけは、永遠に残ります。


一見ふつうの人に見えるのに、簡単な計算問題がとけなかったり、漢字が書けなかったり、空気を読めなくて人に迷惑をかけてしまったり、健常者にとっては簡単にできること、たとえば「この仕事とこの仕事とこの仕事をお願い」と頼まれると、もうそれだけで頭の中が混乱してしまうような、そういった人たちが、発達障害者です。自閉症と呼ばれるものや、ADHDなども発達障害で、さまざまな症状があります。トム・クルーズも「ディスクレシア=難読症」といって文章を読んでも意味が理解できず頭が混乱してしまうという発達障害を持った人の一人です。でも、彼は俳優として大活躍していますよね。日本にも、ごく一握りではありますが、東大だとか一流の研究所などで、突出した才能を活かして、人生の壁を乗り越えている人がいます。


しかし、この本に出てくる人びとは、皆、職を転々とし、健常者から無用の人として扱われ続けてきた「ごく一般的な発達障害者」なのです。私たちは、根本的な部分で彼らを救うことはできないかもしれませんが、手伝えることくらいならありそうだな、と思いました。