ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

人前で叱らない

台湾の番組だと思うんだけど、《爸爸去哪儿?パパどこいくの?》というテレビ番組が面白くて、はまっています。


業界関係者(タレントさんとか監督さんとか)とその子どもを田舎に集めて、スタッフから与えられたさまざまなミッションをクリアさせていくという、半視聴者参加番組。


例えば、朝起きた順に所定の場所へ食材を取りに行き、自炊させるのだが、朝寝坊だともう食材が残っていないとか、子どもたちだけで、ヤギの世話をさせるのだが、一人分だけヤギが足りない。最初はヤギ争奪戦になるのだが、良好なお友達関係を作る中で、「共有のヤギ」ができたり、途中楽しい誘惑が入って、ヤギの世話を放棄してしまい、そのヤギを別の子どもがさらって行くとか… なかなか赤裸々で面白いのです。


親は父親限定。しかも、家事などろくにやったことのないような「ダメパパ」ぞろいで、小麦粉を渡され、肉まんや餃子、うどん作りという発想まではできるのだが、肝心の小麦粉が捏ねられなくて、珍品続出なのです。


さて、この番組の中で、もうひとつ興味深いのは、中国人の親子の関係。経済的に余裕のある、都会暮らしの子どもたちばかりで、かなり甘やかされて育っているため、たびたび父子間でトラブルが発生します。


「もう歩けない!」とひたすら訴え続ける子どもや、父親が料理に悪戦苦闘している最中に、「ミルクが飲みたい」と大暴れして泣く子ども。みんなで楽しく夕食という時間に、一人ひねくれた態度で全く協調性のない子ども。…というように、子どもの困った素顔をきちんと映しているんです。


日本の親は、みんながいる前でも、はっきり子どもを叱ったりするけれど、中国人は「人前で叱る」という行為を絶対にしません。なぜなら、叱るという行為と、人前で恥をかかせるという行為は、別物であるという考えがあるから。逆に言えば、人前で恥をかかせるような叱り方をする人は、その人自身の人格を疑われる行為となるわけです。面子(メンツ)を重んじるお国柄ですね。


私、中国に来て、この習慣はとてもいい習慣だなと思ったんですよね。日本って、見せしめのように人前でわざと叱ったりすること、ありますよね。企業などでも、わざわざ大きな声で、一人を叱りつけることで、他の人にも周知徹底させるというか、暗黙のうちに従わせるというか。それによって、全体の意識の引き締めに役立ったりすることや、新人教育などの手間が格段に削減されたりもするんだけど、負の面も大きいように思います。


例えば、みんなの前で叱られると、本音が吐きにくくなるようなこと、ありませんか? 本当は、カクカクしかじかこういう事情で●●さんの尻拭いをしたら、こうなったのです、みたいな場合とか、もっと上の上司のやり方に従ってやったために、こうなったんです、とか、本当のところがぼけるのは、人前にさらされているから言えないという事情があったりします。なんか、企業ってむしろそういう事情をうまく捌いてこそ、出世できるみたいな風潮ありますよね。それができないと仕事にならんという。


中国の人って、子どもの頃から、そういう表の顔と裏の顔の使い分けをちゃんと教え込まれているから、裏で悪いことも平気でやっちゃったりするんだけど、「この件、ちょっと訳ありなんだけどね…」という相談事がとてもしやすいんです。いちいち説明しなくても、「分かった、皆まで言うな」的な“共犯者”がすぐに出来る。


もちろん両刃の剣なので、善に基づいて動くことが原則ですが、日本人も時と場合によっては、人前で叱らない工夫をしたら、もっと人間関係がうまくいくんじゃないかなぁ、と、子どもたちが叱られるシーンを見ていて、思ったしだいです。