ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

スピードというサービス

日本のコンビニって、あらゆる面で、すごいと感じざるを得ません。品揃えの豊富さは当然のことながら、新商品のラインナップや、売れ筋商品とそうでないものの見極め、陳列方法や在庫管理の方式、納品の物流システム、アルバイトスタッフの使い方やマニュアル、キャンペーンの張り方や集客戦略の斬新さ、最近話題の賞味期限の管理の仕方、照明の明るさ、フランチャイズ共通のBGMや放送、支払い方法の多様化や他業種とのサービス提携による「なんでも屋感」、売り上げ報告などのオンライン化や防犯システム、などなど、数え上げたらきりがありません。


日本にいた頃は、そういった経営戦略としてのコンビニのすごさにばかり目が行っていましたが、私が今住んでいる中国の地方都市のコンビニと比べたとき、上に挙げたようなすごさよりも、もっと感じるすごいサービスがあるんです。


それは、スピードというサービスです。


私は日本にいた頃、朝、ほとんど毎日コンビニに寄ってから出社していました。缶コーヒーを買ったり、タバコを買ったり、新聞や雑誌を買ったり、毎日何かしら買いたいものがあって、必ず立ち寄っていたのですが、中国で同じようなことをすると、遅刻します。


レジ対応が異常に遅いんです。


毎日毎日レジだけを打ち続けているなら、もう少し、無駄のない動きが身につくはずなのですが、笑えるくらいノロいんですね。日本のコンビニで、あの速度で仕事をしたら、クレームの嵐でしょう。もう二度とそのコンビニで買い物をしたいと思わないはずです。


中国人って不思議です。道路で、ほかの車がちょっとでもトロい運転をしていると、思い切りクラクション鳴らしたり、強引に追い抜いたりするし、なんでも我先にと、割り込みしたり、セカセカしているんですが、こういうところはやけにのんびりしているんです。


そう、つまり、労働と個人的事情は、別ということ。


働くときは、急がない。急いだら、損なんですね、きっと。


日本のコンビニは、スピードもサービスの内。速いことが、果たして、いーことかどーか、という基本的問題は別として、日本にはそういう価値観が明らかに存在しますね。たとえば、「特急料金」とか、「スピード仕上げ」とか、そういうサービスがお金になる。確実な仕事をする、という大前提があって、そこに付加価値を求めた結果なのでしょうか。それで、大成功している会社はたくさんありますね。「安全・正確・スピーディ」は、いまや、当然の条件で、あらゆる分野でそれが成し遂げられています。だから、それを当たり前のことだと思ってしまっている現代の日本人には、中国のやり方は、はなはだ「トロ臭く」感じてしまうんですね。


そういえば、電車の特急料金に、どこぞの外国人がクレームをつけたという話を聞いたことがあります。電車に乗っている時間が短いほうが高いとは、どういうことだ! というクレームだったそうです。なるほど〜。


もうひとつ、ある中国在住の日本人の医師から聞いた話です。ある中国人のお母さんが小さな子供を連れて来ました。怖くて耳掃除ができないから、先生やってください、という。もちろん、そういう要望にも気持ちよくお応えするその日本人医師は、さっと耳鼻科グッズを取り出して、ほんの数十秒で、両耳のお掃除を完了させました。


「はい、おしまい。きれいになったよ。泣かなくて偉かったね」
と子供に言うと、子供はうれしそうに笑って、
「痛くなかった!!」
と自慢げ。
ところが、母親の方がオカンムリ。
「さんざん待合室で待たされて、これっぽっちで終わりですか!! ひどい病院だ!!」
母親は、会計時に、あんな短時間でこんなに料金を取るのか、と更にもう一悶着。


その医師は、私にこんな風にこぼしました。
「実は僕、耳掃除得意なんで、それが結構自慢だったんですよ。嫌がる子供も泣かずに掃除できるんで、評判いいんです。下手くそな医者にやらせると、時間はかかるし、子供は大泣きするし、あばれるし、危ないし、大変なんですよ。それなのに、どうしろっていうんでしょうね。困ったもんです」