ひだまりの居場所

精神障害者をはじめ、生活困窮者の心に寄り添うブログです。

やっかいな客

一ヶ月ほど前から、ある日系大手企業の広告制作について、ご相談を受けていました。我が社のトップ命令は、「1年間の広告掲載契約を取って来い!」というもので、当初は中国人営業スタッフが、商談に行っておりました。ところが、先方の日本人総経理(ボス)がどうにも曲者らしく、
「アポした時刻に行っても不在ということが3回も続きました」
「メールしても、返事がありません」
「電話すると、非常に横柄で不機嫌な受け答えをされる」
「打ち合わせのすっぽかしや、メールの返事をしないことを、何とも思っていないようで、全部こちらのせいにされる」
と私に泣きついてきました。


同じ日本人として、こういう態度をとるお偉いさんは、日本の恥だと思っている私は、
「ちょっと私が行ってみましょう」
とアポを取り、行ってみました。


「いやあ、どうもどうも、yueyaさん。直々にお出ましくださるとは」と上機嫌で打ち合わせ室に現れました。


「うちの中国人スタッフが、総経理様のご機嫌を損ねたようで…」
と嫌味たっぷりに切り出すと、
「え? 何のこと?」
と全く関知していない様子。


そこで気を取り直し、広告契約をいただけるかどうかという、具体的な話に一気に突入すると、のらりくらりと弊社の業績を褒めたり、競合他社の悪い評判をわざわざ告げたりと、なんとなく手の内が読めないことをなさるのです。


んもう、面倒くさくなっちゃって、
「で、総経理、どうなさいます? ウチの料金は、コレコレこのような金額で、1年契約特典はカクカクしかじか。限界の数字ですから、これ以上のディスカウントは無理なんですが…」
と直球を投げました。すると、2〜3日時間をくれとのこと。


私は会社に戻って、
「かなりリスキーな会社。たぶん難癖つけてくると思うから、できれば取りたくない契約です。これ以上、まだ何か注文をつけてくるようだったら、切ってもいいですか?」とボスに尋ねると、OKとのこと。


で、結果的に私は、放っといたんです。そのお客さんを。こちらからは一切連絡入れずに、待っていたんですね。…というより無視していたというほうが近いんですが、5日ほど経った頃、あれほど悪口を言っていた競合他社とアイミツを取っていたとのこと。当然、他社の方が後出しのじゃんけんですから、条件がいいわけです。ウチよりわずかに安い上、付帯サービスも倍! OH〜! ナーイス! 面倒なお客さんは、ウチではNO THANKYOUなのでしゅよ〜、と心の中で思いつつ、総経理さんにお電話、お電話。


「A社さん、さすがですね。ウチはここまでお安くはできませんから」
「え、いや、ウチとしては、御宅で広告やってもらいたいと思っているんですよ。ただ、いかんせん安い方を選ばざるを得ない社の事情がありましてね…モゴモゴ」
「そうですか。ありがとうございます。ですが、先日も申し上げましたが、ウチの底値でお話してありますので、これ以上のディスカウントには応じかねるんですが…」
「そうですか。またお電話します」
ガチャ…プー・プー・プー…


3日前、この会社の日本人社員の方と宴会でいっしょになりました。一応ご挨拶しなければと思い、
「なんだかご期待に添えないみたいで、申し訳なく思っています」
と伝えると、その社員さん、
「そうなんですか? 社内的には、御社にお願いしようという意見で一致しているはずなんですが、上司がまだゴネてますか?」
と裏情報をもらしてくれました。


「お値段が折り合わなくてですね、ご辞退申し上げようと思っているんですが…」
と私。
「いやいや、ちょっと待ってくださいよ。そんな展開になっていたとは、知りませんでした。もうこれ以上は安くならないというのは、決定事項なんですか?」
「はい」
「参ったなぁ。まだ値切る気でいるんだろうなぁ…」


競合他社との価格差は、年間にしてわずか3000日本円程度。あの大手企業がどうしてそこまで金額のこだわるのかと思っていたのですが、どうやら総経理さんの点数稼ぎの餌食になっていたようです。要は、各中国拠点の全体会議で、ウチの支店はこれだけ値切った、というのが自慢になるらしく、「えらいところに嵌ったな」と私は一気に及び腰になりました。


そして今日、総経理ご本人から、私宛にメールが届きました。1年間契約したいって。ああ、いばらの道が待っている…。この仕事は、私のやりたくない仕事ランキングのナンバーワンに昇格しました。